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今回は、水族館でも人気の「クラゲ」について、大学で生物学を学んだ筆者が楽しく整理してご紹介します。
クラゲってなに?
名前の由来
「クラゲ」の語源には諸説あります。目が見当たらなかったため「暗い(くらい)」に由来する説、海中でくらくら回る姿からという説、丸い入れ物の「輪笥(くるげ)」に似ているという説など。
【水母】←なんと読む? 「海月」との違い、由来とは
英語では jellyfish(ゼリーのような体+fishの慣用)、スペイン語では Medusa(ギリシャ神話のメデューサに由来)と呼ばれています。
古事記にも登場するクラゲ
日本最古の古典『古事記』の冒頭では、国土が「海月(くらげ)」のように漂う様子が描かれます。
「国稚(わか)く浮きし脂の如して、海月(くらげ)なす漂へる時……」
古事記「天地の初発」
まだ形を成さない世界の比喩として、形を定めず漂うクラゲが用いられたわけです。現代語訳は國學院大學のデータベースで読むことができます(リンク)。
クラゲ研究とノーベル賞

2008年のノーベル化学賞では、下村脩さんらがオワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質(GFP)の発見・応用で受賞しました。GFPは細胞内で光る目印として機能し、発生や神経、がん研究など生命科学の基盤ツールになっています。
クラゲを知るための基本知識
いつから地球にいる?
形や特徴は現在と異なるものの、クラゲ型の生物はおよそ数億年前(約6〜10億年前とする説もあり)から存在していたと考えられています[1]。長い進化の時間を経て多様化し、河口・浅海から深海、温帯から寒帯まで幅広い環境に適応しています。
分類学でみたクラゲ
「クラゲ類」は大きく刺胞動物門(ヒドラ・イソギンチャク・サンゴ・多くのクラゲ)と、光る櫛板をもつ有櫛動物門(クシクラゲ類)に分けられます。
刺胞動物門(しほうどうぶつもん)
刺す細胞「刺胞」をもち、触手で餌をとらえるグループ。クラゲの仲間は大きく次の綱に分かれます[1]。
- ヒドロ虫綱(約2,700種)… 花クラゲ目、軟クラゲ目、淡水クラゲ目、レングクラゲ目、硬クラゲ目、剛クラゲ目、管クラゲ目
- 箱虫綱(約40種)… 立方クラゲ目(強い刺毒で知られる)
- 鉢虫綱(約200種)… 旗クラゲ目、根口クラゲ目、冠クラゲ目
- 十文字クラゲ綱(約50種)… 十文字クラゲ目
有櫛動物門(ゆうしつどうぶつもん)
体表に櫛のような繊毛列をもち、発光する種も多いグループ(クシクラゲ類)。主な綱は次のとおりです。
- 有触手綱(約100種)… オビクラゲ目、カブトクラゲ目、フウセンクラゲ目、クシヒラムシ目
- 無触手綱(約50種)… ウリクラゲ目
なお、生物の分類は大きい順に「界 → 門 → 綱 → 目 → 科 → 属 → 種」。水族館で見かける学名は、基本的に「属名 種小名」の二名法で表記されます。

同じ「属」のクラゲを見比べると、種ごとの違いが分かって面白い!水族館での“間違い探し”におすすめです。
クラゲの一生(生活史)
クラゲ(刺胞動物)には、水中を漂うクラゲ型(有性世代)と、岩などに付着するポリプ型(無性世代)があり、世代交代します。

たとえるなら、クラゲ型=花、ポリプ=根や株。花が散んでも株が生き続け、また花を咲かせるイメージです[1]。
無性生殖でどう増える?
有性世代で受精するとプラヌラ幼生が生まれ、やがて基質に付着してポリプになります。ポリプは無性生殖によりクローン的に増えたり、ストロビレーション(体が輪切り状に分かれる)によって多数のエフィラ幼体を放出し、成長してクラゲ型になります。
まとめ
クラゲは、古典にも登場するほど身近で、最新の科学とも深くつながる不思議な生き物。分類や生活史が分かると、水族館での見え方が一段と面白くなります。次にクラゲと出会うときは、ぜひ「名前・分類・一生」に注目してみてください。
参考文献
[1] 三宅裕志 , Dhugal Lindsay『最新クラゲ図鑑 110種類のクラゲの不思議な生態』誠文堂新光社, 2013
[2] 日高敏隆 , 奥谷喬司 , 今福道夫 , 武田正倫『日本動物大百科 7 無脊椎動物』平凡社, 1997

