こんにちは、ブログに遊びにきてくださりありがとうございます。
今回は、クラゲに関わる体系的なあれこれを大学で生物学を学んだ筆者が勉強もかねて調べたので、ご紹介します。
クラゲってなに?
クラゲという名前の由来
そもそも何故「クラゲ」といわれるようになったのか? その語源については諸説あります。目が見当たらなかったため、見えないだろうとされ「暗気」から由来したとされる説や、クラクラと回転しながら海中を浮かぶ姿から「クラゲ」といわれるようになったという説。「輪笥(くるげ)」という丸い入れ物に、形が似ていたことから由来するという説まで様々あります。
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クラゲの名前の由来は、目がないため「暗い」の意味から来ている、もしくはクラクラと回転するところからと諸説あるようです。
他にも、英語では「ジェリーフィッシュ」と呼ばれ、ゼリー状の魚を意味しています。
スペイン語では「Medusa(メドゥーサ)」と呼ばれており、毒を持つことから船乗りや漁師たちからはギリシャ神話に登場する見た者を石に変えてしまう怪物・メドゥーサの変身とも信じられていたようです。
日本最古の古典『古事記』に出てくるクラゲ
日本最古の古典ともいわれる『古事記』にもクラゲがでてきます。
『古事記』は、奈良時代に書き起こされたもので、内容は神代(神様が治めた時代)から推古天皇の治世までの天皇家の歴史や神話・伝承を上巻・中巻・下巻からなっています。
クラゲは、『古事記』の「天地の初め」の章に、次のように出てきます。
「国稚(わか)く浮きし脂の如して、海月(くらげ)なす漂へる時、葦牙(あしがび)の如く萌え騰(あが)る物によりて成れる神の名は、宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)。」
古事記 天地の初め
これは、「国がまだ未熟で浮かんでいる肉脂のような状態で、クラゲのように漂っている時に、葦の芽のように出現してきた神の名前は、宇摩志阿斯訶備比古遅神」という意味です。
『古事記』では、国がまだ発展途上の様子を、海に漂うクラゲに重ねたのです。
ちなみに『古事記』は國學院大學の古典文化学事業の一環で、こちらのウェブサイトから現代語訳まで見れます。
クラゲの研究
多くの人々を魅了しているクラゲですが、魅了された人々の中にももちろん研究者がいます。
2008年のノーベル化学賞にも受賞しており、クラゲに関わる有名な研究者の一人が、下村脩(しもむら・おさむ)さんです。
下村さんは、オワンクラゲが光る仕組みを解き明かし、緑色蛍光たんぱく質(GFP)を発見、構造を解明しました。
この下村さんがオワンクラゲから発見したGFPは、生命分野の研究に欠かせない道具だけでなく、がんなどの病気を観察するといった医学分野の研究にも貢献しています。
クラゲを知るための基本的な知識
どのくらい前からクラゲはいるのか
クラゲは現代でも生きていますが、形や特徴こそは違えど、約6憶年前、あるいは10憶年前から地球上に存在していると言われています[1]。
長く地球上に存在しているからこそ、多種多様なクラゲが河口、浅海から深海、水温が高い地域から寒冷帯といった世界のさまざまな地域で見られます。
分類学から見るクラゲ
クラゲ類は一般的に、「刺胞動物門(しほうどうぶつもん)」と「有櫛動物門(ゆうしつどうぶつもん)」の2つの動物群からなっています。
刺胞動物門(しほうどうぶつもん)
刺胞動物は、ヒドラ・イソギンチャク・サンゴ・クラゲの一部を含む仲間の総称です。
文字通り、刺す細胞である「刺胞」を触手に持っており、毒液を刺したりすることで餌を採って食べたりしています。
刺胞動物門のうち、クラゲの仲間大きく分かれては次の4つに分かれています[1]。
- ヒドロ虫綱(ひどろちゅうこう:約2700種)…花クラゲ目、軟クラゲ目、淡水クラゲ目、レングクラゲ目、硬クラゲ目、剛クラゲ目、管クラゲ目
- 箱虫綱(はこむしこう:約40種)…立法クラゲ目
- 鉢虫綱(はちむしこう:約200種)…旗クラゲ目、根口クラゲ目、冠クラゲ目
- 十文字クラゲ綱(じゅうもじくらげこう:約50種)…十文字クラゲ目
有櫛動物門(ゆうしつどうぶつもん)
有櫛動物は、クシクラゲ類とも呼ばれるクラゲ類の総称です。クシクラゲの他にも、ウニ・ヒトデなどに外部寄生するような種もいます。
- 有触手綱(ゆうしょくしゅこう:約100種)…オビクラゲ目、カブトクラゲ目、フウセンクラゲ目、クシヒラムシ目
- 無触手綱(むしょくしゅこう:約50種)…ウリクラゲ目
ちなみに有櫛動物は、他の動物綱とは神経や発生に関わる遺伝子が他の動物のゲノムと異なっていることが研究でわかっています。
気になった方はNatureの「進化:他とはちょっと違う有櫛動物」を見てみてくださいね。
生物学における分類について
生物学の分類は大きなカテゴリーからあげていくと、界、門、綱、目、科、属、種となります。
水族館などでよく見る「学名」は、大まかに属名+種名のようにルールに則って表記されています。
大まかな表記ルールとして、この属名+種名があるため水族館などで同じ属を見つけたときは種が違うとどんな違いがあるか?といった間違い探しのような遊びも楽しめますよ。
クラゲの一生
生物学的には生まれてから成長・成熟するまでの言葉として「生活環」もしくは「生活史」があります。
クラゲが広い地域の色んな環境で見られる秘密は、その生活史にあります。
刺胞動物は、フワフワと水中を漂う時期(有性世代)と岩などにくっつく時期(無性世代)があります。
花にたとえると、クラゲが花で、ポリプは草にあたります。なので、花(クラゲ)を咲かせた後も草(ポリプ)は生き続け、また花を咲かせるということです[1]。
クラゲの増え方 | 無性生殖
クラゲはその個体の一生の中で、雌雄がある有性世代と雌雄の区別がない無性世代の時期を繰り返します。
有性世代に卵と精子が受精すると、幼生であるプラヌラが生まれます。
プラヌラはフワフワと水中を漂いますが、岩などのくっつけられる場所を見つけるとポリプになります。
ポリプは、無性生殖をする世代です。無性生殖とは、ゾウリムシなどのように自らが分裂して増えていく方法です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
クラゲに関する様々な知識をご紹介しました。参考になれれば嬉しいです。
参考文献
[1] 三宅裕志 , Dhugal Lindsay「最新クラゲ図鑑110種類のクラゲの不思議な生態」誠文堂新光社, 2013
[2] 日高敏隆 , 奥谷喬司 , 今福道夫 , 武田正倫「日本動物大百科7無脊椎動物」平凡社, 1997
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